事業承継時やM&A時には、あらゆる書類が瞬時に出せる状況を作ることが大切です。
以前、葬祭業のM&Aをお手伝いした時のことですが、買い手側から各斎場の設計図の提出を求められました。
社員にはオフレコで進んでいるM&Aなので、ご高齢の社長夫妻は、社員が帰社後会社に戻り、倉庫や金庫などを探し回りました。
買い手側の要望は、「斎場を将来改装したいから!無ければ、その斎場だけ買えないかもしれない!」とのことでした。
しかし、一番古い斎場の設計図だけがなかなか見つかりません。
それでも、社長夫妻は必死に探した結果、発見することができたのです。
こちらの葬祭業は、日ごろから重要書類はきれいにファイリングしていたのですが、
それでも探し回らなければならない事態になったのです。
事業承継でも一緒です。
後継者が、すべてを把握していないと「わからない」では済まされないのが、経営者の責務ですから
ある会社では、後継者は決まったものの、借り入れは多いうえ、株主も分散し、金融機関や取引先からの質問にも現経営者が「わかりません」の一点張りの姿を見て、後継を断念したこともあります。
決して「たかが書類」とは思わないでください。
下記に必要な書類等を列挙しますので、いざという時に困らないように今のうちから整理していてください。
1 組織・経営関連
・株式情報書類(株主名簿・株券台帳)
・株主リスト(属性情報含む)
・定款
・社内規則・規程(取締役会規則、監査役会規則、職務分掌規程、稟議規程、就業規則、給与規定、退職金規定、経理規程)
・株主総会議事録、取締役会議事録
・商業登記簿謄本
・組織図
・業務フローを記述したもの(商流)
・会社案内パンフレット(沿革等も記載した会社紹介、商品・サービス紹介を記述したもの)
2 財務関連
・決算書(注記、科目内訳書、キャッシュフロー計算書含む)
・各種会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳答)
・金融機関等の残高証明書
・借入金に関する情報(借入条件、担保・保証人に関する詳細等)
・固定資産台帳
・時価情報
3 事業・取引関連
・自社が属する業界の市場動向や競合会社に関する情報
・事業計画書(単年度および中期計画)
・予実管理実績に関する資料
・取引先および仕入先に関する一覧リスト(各要約情報含む)
4 税務関連
・税務申告書(法人税、法人住民税、消費税等の申告書)
・税務調査の履歴、修正申告に履歴
・税務に関する届出の履歴と届出書の控え
5 法務関連
・取引に関する各種契約書
・不動産(事業用および非事業用も合わせて)に関する一覧リスト
・リース・レンタル資産の契約一覧
・知的財産権のリスト(各要約情報含む)
・許認可関係リスト(各要約情報含む)
・クレーム対応の記録
6 人事・労務関連
・役員リスト(管掌・略歴含む)
・従業員および役員退職金規定
・従業員リスト(年齢、職位、勤続年数、職務内容等が記載されたもの)
・組織図(従業員の配置含む)
・雇用契約書および各種規則・規程(就業規則、給与規定、アルバイト・パート従業員就業規則等)
・出勤簿、タイムカードによる労働日数・時間に関する情報
・社会保険に関する情報
・労働組合の有無、労使トラブル等の情報
7 コンプライアンス
・コンプライアンスへの取組み状況がわかる資料
・許認可、各種必要な届出への対応状況がわかる資料
・営業機密および個人情報の取扱いに関する情報
・反社会的勢力との取引排除への取組み状況がわかる資料
・環境規制への取組みがわかる資料
8 保険
・加入保険リストおよび各保険の概要情報の整理
・保険証券、保険会社から定期的に送付される計算書類
9 ITシステム
・システム構成図(ハードウェア(モバイル含む)、ソフトウェア、ネットワーク)
・使用ソフトウェアのリスト(各概要情報含む)
・セキュリティ管理に関する情報
・システム投資計画に関する情報
10 海外関連
・海外子会社の基礎的事項に関する情報(資本状況、株主および株主間契約、役員及び各自の役割、準拠法や税制、資金調達および海外送金への制約等)
・海外子会社の事業内容と経営管理状況に関する情報
・海外子会社の事業計画