
現在、事業承継士として活動する中で、事業承継に向けた準備が何もなされていない会社が多いことに驚きます。
当初は、「事業承継」という一点に注目して活動をしていたのですが、その手前に多くの問題を抱えていることが現場でわかってきました。
「事業承継」は、後継者問題だけではありません。
とても大切な事なんですが、この会社を本当に継ぐ必要性があるのか?(存在価値)を見つめなおす時が、「事業承継」問題に取り組む時だと思うのです。
ある調査では、初代から二代目に承継できる会社は30%、二代目から三代目に承継できる会社は、その30%。
つまり、初代から三代目まで承継できる会社は、10%を下回っており、別の調査では3%だとも言われています。
事業承継ができる会社は、ある意味奇跡だと言っても良いと思います。
だから、私は「終わり方」がとても大事だと思います。
「どの段階になったら、終わろう!」
この覚悟を持って、経営に取り組んでいただきたいのです。
拡大志向で、負債を抱え、設備投資をし、時代の変遷に気付かず、舵を切ることもできず、過去の成功体験を追い求めた結果、負債だけが残ってしまった会社は山ほどあります。
後継者候補がいても、このような会社を継がせることは忍びなくはないでしょうか?
2025年までに127万社が事業承継できずに廃業するという内容もネット上で踊っています。
これが、目の前にある現実であることを理解した上で、これからどのように経営をしていくのかを改めて考えてください。
決して、終わりたくても終われない状況にだけはならないようにしてほしいものです。
そこで、大切なことは、現状を知ることです。
弊社では、これを「経営の見える化」と言っています。
弊社主催の「経営“見える化”実践講座」では、特に財務の見える化に取り組んでいますが、「見える化」は、財務だけではありません。
業務・技術・法務・労務など経営に関するすべての見える化をしてください。
その他にも現在に至るまでの変遷を時代背景や業績とともに、その時々に打ってきた施策を顧みることも必要です。
先日、ある企業の社員さんと話す機会がありました。
その会社の前身の会社は私もよく知っていました。
上場企業でしたが、結局廃業に至るという結末を迎えたのです。
現在は、当時の経営幹部のそれぞれが会社を立ち上げ、改めて上場を目指していると言います。
当時、私なりにその廃業理由を分析していたので、その内容をぶつけてみたところ、「その通り」と言ってくれました。
だから、当時の失敗を繰り返さないように慎重に事を運んでいるとのことでした。
成功にも失敗にも理由があります。
そこをしっかり分析し、次につなげることは重要なことです。
ここでまた厳しいことを言いますが、この見える化の段階で、本当に内容が厳しい会社に対して、無責任に「ガンバレ!」と言えるでしょうか?
あきらめることが良いとは言いません。
しかし、私は「廃業」か「破産」を進言するようにしています。
それは、傷口が拡がる前に次のステップに進んでいただきたいからです。
相談に来られた方で「廃業」「破産」に至った社長さんの口から出る、ある言葉があります。
「○○年前に既に終わっていたのですね!あの時に誰かが背中を押してくれていたら・・・」
そこで私は、「その当時に廃業や破産を進言されていたら、言うことを聞いていましたか?」と尋ねると首を横に振られます。
皆さんが、プライドや怖さなどの心理状態で問題を先送りしたいのは、よくわかります。
しかし、私の経験上、キツイ時ほど、問題に立ち向かった方が選択肢が多く、良い結果になることがよくあります。
今は、法整備は整っており、セカンドチャンスが作りやすくなっています。