事業承継トラブルが悪化し、経営崩壊する可能性の事例

今日は、事業承継がトラブルに発展し、経営崩壊する可能性を事例に基づいてお話しします。

 

1.自社株式が分散していたため、現経営者と後継者が会社を追放された

甲社の経営者Aは、先代の遺言により、兄弟姉妹のB、C、D、Eとともに自社株式を20%ずつ均等に相続しました。

Aは、自分の長男であるFを後継者にする準備として取締役に就けたのです。

しかし、その後B、C、D、Eが会社の運営方針を巡り経営者Aと対立。

4人は結託してAとFを解任し、それぞれの子供たちを役員にしてしまったのです。

同族企業では、自社株式が経営者以外に分散していることが原因で、トラブルが多々見られます。

経営者が過半数の株式を保有していない場合には、株主が結託して、対立する経営者を会社から排除するようなことも起こり得るのです。

この事例の場合、もし、Aが長男のFに確実に後継させたかったのであれば、B、C、D、Eから自社株を買い取るなどして株式の集中を量っておくべきだったのです。

2.自社株式を相続した後継者が遺留分を請求され多額の借金を負った

乙社の先代社長Aは長男Bに自社株を生前に少しずつ贈与していました。

しかし、突然事故で亡くなってしまったのです。

贈与していない自社株式についてもBに相続させる旨の遺言が残されていたため、Bが引き継ぐことになりました。

その後、相続人であるBの弟Cと妹Dから「自分たちには十分な財産が与えられなかった。兄貴(B)ばかりが得をするのはおかしい!」と遺留分減殺請求が行われ、後継者であるBが多額の借金をして遺留分相当の金銭を支払う羽目になってしまいました。

(※遺留分=一定の相続人が、相続に際して法律上取得することが保証されている相続財産の一定の割合のこと)

この遺留分を侵害した贈与・遺贈等が行われた場合、遺留分を侵害された者は、贈与・遺贈されたものに対し、その侵害額の請求を行うことができるのです。(=遺留分減殺請求)

この事例では、前経営者Aは遺留分を考慮せずに自社株式を後継者Bに相続させてしまったために遺留分減殺請求を受け、多額の借金を負う事態に陥ってしまいました。その上、遺留分を巡る争いが起こったために、兄弟間の関係も悪化してしまったのです。

3.自社株式の相続税を支払うために自宅の売却を検討している

丙社では、株式を100%所有している社長(父)Aが亡くなった後、長男Bが後継することになりました。

AもBも自社株式の評価をしたことがなく、計算方法さえも知りませんでした。

Aが亡くなったためにBは相続税申告のために株式評価と税金の計算を税理士に依頼したのです。

そして、示された相続税の額は自社株だけで億の額に達しており、Bを驚愕させたのです。

Bは、相続税を収める資金を工面するために自宅の売却も検討しているとのこと。

数十年以上にわたり、安定して利益を上げ続けてきたような会社では、株式評価額が数千万円、億単位になることも珍しくありません。

相続時にその事実を知って苦しみ悩む後継者が多いのも事実です。

自社株の評価額を知ることで然るべき対策を取っていれば、このような事態を回避することもできます。

一度、自社株を評価してみてください。

4.間違った相続税対策で経営の不安定化を招く

乙社の経営者Aは、従業員持株会を設立することで相続財産が減少させ相続税節税を対策しました。

そして、従業員持ち株会を立ち上げ、Aの保有する自社株式35%を譲渡したのです。

その後、株式を手にした従業員の意識が良い方に変わればよかったのですが、権利意識だけが高まり、株主総会で特別決議の拒否や配当要求、賃金アップの要求が次々と行われる状況になってしまったのです。

本来、Aは従業員持ち株会のメリットとデメリットを考慮し、対策を打つ必要があったのです。

その対策のひとつとして、従業員持株会に譲渡する株式を無議決権株式(種類株式)にしておけば、従業員は株主総会の決議に参加できないので、特別決議で拒否されるようなことはなかったのです。

相続対策を近視眼的に行うとこのような結果を招きます。

事業承継問題は、いろんな絡みがあるので、全体最適で対応したいものです!

5.法定手続を怠ったために後継者が株主であることを否認

丙社の代表取締役Aは、長男である後継者Bに贈与で長期間にわたり、株式を譲渡していました。

しかし、株主を身内で固めていたことに安心していたのか、譲渡制限付株式の取締役会の譲渡承認手続きを行っていませんでした。

ところが、後継者Bと仲が悪い長女C(株主&取締役)が「Bを株主であることを認めない」と言ってきたのです!

結局、長期間かけて代表取締役Aから後継者Bへ株式贈与をしてきた手間は、

白紙になることでムダになってしまったのです。

(※渡制限付株式:同族企業では、株式が家族、親族以外に渡らないようにするために取っている株式形態)

本来、取締役会設置会社であれば取締役会で、取締役会非設置会社であれば株主総会で譲渡を承認しなければならないのです。

このように、身内だから大丈夫だろうという感覚で法定手続きを踏まずにことを進めてしまうと、このような結果が起きてしまいます。

福岡事業承継ソリューションズでは、法的なことはもちろん、家族間の感情のもつれも一緒に解決できるように家族会議などを行い、全体最適で解決しています。

6.経営承継円滑化の条件を満たせず恩恵を受けられなくなった

経営承継円滑化法の認定を受けると

①税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定

②金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定

③遺留分に関する民法の特例

以上の恩恵を受けることができます。

この事例は、経営承継円滑化法が改正される前の事例ですので、今は条件がかなり緩和されています。

丁社の経営者Aは、前経営者B(父)から相続した自社株式にかかる相続税について経営承継円滑化法の認定を受け、相続税の支払いを猶予されていました。

しかし、以前の経営承継円滑化法は、ある一定の従業員の雇用を維持することが条件であったために、

経営環境による悪化で大幅なリストラを断行したことによって、この特例の恩恵を受けることができなくなってしまったのです。

そのために猶予されていた巨額の相続税を納めなければならなくなり、経営者Aは、納税資金を工面しなければならなくなったのです。

経営承継円滑化法は、同族企業の事業承継において、相続税などの負担を軽減するための手段として非常に効果的な選択肢です。

しかし、その趣旨や条件をしっかりと理解して活用しないとこの事例のようになってしまいます。

全体最適で、自社がとるべき事業承継の方向性を一緒に考えていきましょう!

7.名義株主から決定事項の無効を訴えられ訴訟問題に発展

乙社は、事業承継目的で、会社分割をすることを決定しました。

ところが、先代経営者Aの兄B(株主名簿に名前が掲載)の相続人C(Bの子供)が・・・

「この決定には株主総会の決議が必要なのに、株主総会にも呼ばれず参加できていない。よってこの決定は無効!」と主張してきたのです。

事実関係は、先代経営者Aの兄Bは、名義株主だっただけなのです。

※名義株主:以前の商法の時代に株式会社の設立時には一定数の発起人(株主)が必要だったために存在する名義だけの株主

Cの主張に対し、会社は、「単なる名義株主なので株主総会に参加する必要はない」と主張。

結果として、Cは訴訟に至ったのです。

このように名義株主問題を放置したままでいると、名義株主本人やその相続人から株主であることを主張され、こじれているケースが多々あります。

全株主の現状況を把握することを徹底してください!

8.業を煮やし会社を飛び出た後継者

甲社代表取締役Aは、長男Bを社長の地位に就け、自分は会長に就任しました。

Bの経営者としての資質に疑問を持っていたばかりに株式贈与も行わず、厳しい指導ばかりの繰り返しでした。

そして、最終的に長男Bは不満を爆発させ会社を飛び出てしまったのです。

その後、甲社はM&Aか廃業の選択を迫られることになったのです。

よく「うちの息子は、まだまだ」という言葉を聞きます。

しかし、ご自分が息子さんの年齢の時はいかがだったでしょうか?

ご自分もいろんな経験をされながら、会社を引っ張ってこられて今があるのですから・・・後継者として本気で育てられたらどうですか?

先代の血をひいている子供さんなら、小さなころから親の背中を見て育っています。

花ひらく時が必ず来ると信じて、計画的に育てていきましょう。