今日は私が所属する事業承継協会から送られてくる冊子に事業承継の失敗事例が載っていたのでご紹介します。

 

事業承継の失敗事例

~一筋縄ではいきません~

私は、ある会社の元3代目の社長である。

 

今回は、事業承継が失敗した事例について、自らの体験を踏まえてお伝えする。

 

1.株主総会で解任された代表取締役

 

ある曰、私の父である会長が、会社の株主総会の際、代表取締役であった私に対し、解任する議題を出した。

 

その議題に対し、役員である私の義兄(会長の長女の配偶者、私の弟(会長の次男)、古参の役員がそろって賛成票を投じた。

 

結果、私は代表靫締役を解任された。

 

私の側近だった総務部長と技術部長は降格し、若手社員は退職した。

 

現在、私の義兄が会社の代表取締役となり、新社長を務めている。

 

2.私が代表取締役を解任されることになった経緯

 

私が会社の代表取締役になった頃に話を戻す。

 

当時の取締役会で、私は所信表明として、自分が考える経営方針を発表した。

 

すると、経営方針の違いから、私と会長である父は激しく衝突した。

 

その結果、激昂した父は自ら会社を出て行った。

 

そして、数年後には、私の経宮方針に不満を抱いていた義兄にも、会社を辞めてもらうことにした。

 

ところが、この対応がまずかった。

 

私の姉(会長の長女)が、私に代表取締役の地位を取られ、自分の夫(私の義兄)を辞めさせられたことに対し、強い反発を示したのである。

 

その時は、私に対する義兄と姉の恨みが、思わぬ形で返ってくるとは予想もしていなかった。

 

3.娘婿との複雑な家族関係

 

会社は、創業から75年間、航海機器メンテナンス業を行っており、地元では名の知られた存在である。

 

創業者である私の祖父は、4人の子供に恵まれた。

 

祖父の長女の結婚相手が私の父であり、この会社の2代目である。

 

創業者と2代目は、義父と娘婿という絶妙な閔係を保ちながら、二人三脚で経営していた。

 

父から見ると、長女、長男の私、次男、三男の4人兄弟である。

 

これらの4人が何らかの形で経営に関与することになるのだが、お互い独身であった頃の良好な兄弟関係は、それぞれ配偶者を持つことで、微妙な亀裂が徐々に入り出す。

 

私の姉である長女は、会社に入社後、当時の業部長であった従業員(私の義兄であリ、後の新社長)と結婚した。

 

その後、その義兄と私の両者が会社の3代目の後継者候補となるのだが、この関係がよろしくなかった。

 

温和な義兄に対し、実の親子で言いたい放題の私。創業者である私の祖父からすると、経営者としてどちらが扱いやすいかは、火を見るより明らかであった。

 

そして、私の弟(父の次男が、祖父家の養子に入ることになる。彼は創業家の株式18%を相続し、実質ナンバー2の株主となった(長男である私は15%保有)。

 

現在会長である父は株式30%を保有しており、ナンバー1の株主であるが、「死ぬまで株を譲らない」と公言している。

 

4.争族は揉める前に対策を

 

長期入院していた母の病状が悪化した頃株主である母に、もしものことがあった場合に備えて、長男である私は、専門家を交えて、相続人の兄弟4人で話し合いの場を持つことを考えた。

 

そして、三男である弟に、それを他兄弟に伝えてもらった。

 

すると数曰後、長女である姉が、「そっちが専門家を用意するなら、こっちも用意する!」と、私に戦闘モードで言ってきた。

 

私は以前の顧問税理士から、会長が公正証言遺言を公証人役場へ提出した話を聞いていた。

 

それは、“指定相続人は長男である私であり、会社が保有する全自社株を長男が相続する”という内容である。

 

しかし、民法第902条では、“遺留分に関する規定に反することができない”とある。

 

つまり、遺言書で相続人が指定されても、他の相続人から遺留分侵害請求を出されたら、拒否することはできない。

 

後継者が遺留分に相当する価額を金銭で賠償できない場合は、非後継者の他兄弟と自社株をシェアすることになる。

 

5.“遺留分に関する民法の特例”の活用

 

このような場合、自社株を守る応急措置が、中小企業経営承継縁滑化法で定められた、“遺留分に関する民法の特例”である。

 

この制度には、株式等を遺留分算定基準財産から除外できる“除外合意”と、株式等の評価額をあらかじめ固定化できる“固定合意”、この2つの特例がある。

 

私は、この“除外合意”を便って、遺留分算定基礎財産より自社株を除外することで、会社の株式の分散を防ぐ方法を選ぶことを考えている。

 

ただし、それには、相続人全員の合意が必要になる。

 

この会社の場合、長女家族と長男家族とは、以前から後継者争いで軋轢があるため、無償合意が得られるのは難しいと考える。

 

6.まとめ

 

同族経営が争族に発展するケースは少なくありません。

 

このような特有の事情を経宮課題の1つと捉えたとしても、結局、一番の被害者は、従業員であり、取引先ということになります。

 

うちに限ってこんなことは・・・が危険です。